WhistlePart2 (口笛が使用されている音楽・ヴォーカル)

口笛は人間に生まれたときから備わっている技量の一つである。個人の差はあれ、誰しもが少なからず口笛を吹いた経験があるだろう。それだけに音楽の世界でも口笛は一つの表現方法として使われることがあるし、口笛を題材にした曲も多い。日本なら美空ひばりの「悲しき口笛」をはじめ、最近ではミスチルの「口笛」などが口笛を題材にした代表的な曲といえるだろう。口笛は人の心の状態をその音や音色で表現できるが、それは人間自身が自分の体の部位を使って吹いているだけに、時には楽器よりもより明確にその状態を伝えることができる。気分がいいときについつい口すさむのも口笛、寂しさを紛らわすのも口笛、あらゆる状況で口笛は吹くことができるのだ。しかし、人に聞かせようとすると口笛にはかなりの技量が要求される。それゆえ、口笛が題材になっていても、口笛自体の音が曲の中にないことも多い。ここでは口笛の音がしっかりと曲の中にフューチャーされた曲をピックアップしてみた。


 孤独の旅路にふと口ずさんだ口笛
                   
 さわやかな口笛
                   
ドック・オブ・ザ・ベイ
Doc of the Bay

Otis Redding
ジョージ・ガール
Georgy Girl

The Seekers

メンフィスを中心にしたサザン・ソウルの代表的アーティストであるビックOの「ドッグ…」は1967年の大ヒット曲である。紆余曲折、放浪の末に行きついた港で、疲れ切った男がドックに座っている孤独の姿を歌った。スローでブルージンな語り口は絶妙で、永遠のスタンダードとして歌い継がれるだろう名作だ。この曲を録音して3日後、レディングは飛行機事故に遭い、26歳の若さで急逝した。曲は死後リリースされ、これが遺作となってしまうことになる。その曲には感情的に歌う従来の歌唱方とは違う、押さえ気味のレディングがいた。スターの急死はB・ホリー、J・レノンと同じくらいのショックをもたらすことになった。曲は4週連続ナンバー1となっている。歌の終わりに孤独を紛らわすような口笛の音が響き、フェイドアウトする。口笛が実に絶妙でいい味を出した作品だ。

シーカーズはよくイギリスのグループとして紹介されるが、実はオーストラリア出身。ジュディス・ダーハムという女性ボーカリストと、3人の男性によるフォーク系のコーラス・グループで、PPMと同時期に活躍した。この「ジョージ・ガール」は66年の同名のイギリス映画の主題歌で、イギリスはもちろん、アメリカでも大ヒットした。オーストラリア出身歌手として、初めて全米ナンバー1を獲得した曲となっている。軽快な口笛のイントロで始まるこの曲は、かなりスピーディーで、ゆったりしたフォークが多いシーカーズにしては、ちょっと方向の違った曲だった。しかし、最初の歌い出しの「Hey there, Georgy girl」だけでもわかるように、ダーハムと男性陣の美しいハーモニーは健在。彼らの新たな一面を発掘させた名曲である。近年、ホンダの「VAMOS」のCF曲として使用された。
 歌とのコントラストを際だたせた口笛
                   
 休日のひとときを彩る口笛
                   
 
ストレンジャー
Stranger

Billy Joel
デイドリーム
Day Dream

Lovin' Spoonful

77年発表のこの曲はプロデューサーのフィル・ラモーンと組んで製作した同名アルバムからのシングルで、ビリーがスーパースターへと駆け上がる足がかりとなった作品。それまでも「ニューヨーク物語」などの良質の作品を発表していたが、内容の割りに都会的なセンスに若干欠けているという欠点があった。それを解消したのがフィルである。数々のアーティストをスターダムへと押し上げた超大物プロデューサーは彼の才能を見事花開かせた。以降、このコンビはビックヒットを連発していく。口笛の寂しげな旋律で始まるこの曲は、日本でも大ヒットとなった。イントロとは180度雰囲気の異なる重厚な曲を、最後に再び口笛の音で締める。このコントラストをつける口笛部分がなければ、大ヒットはなかっただろう。プロデューサーの手腕が見事に発揮された曲となった。

「グッドタイム・ミュージック」と称された彼らはニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ出身。60年代中頃、ビートルズをはじめとするイギリス勢に対抗するアメリカのグループとして頭角を現したが、麻薬問題などにより、わずか4年で解散した。この曲はそんな彼らの2枚目の同名アルバムからで、「魔法を信じるかい?」「サマー・イン・ザ・シティ」と並ぶ大ヒット曲。J・セバスチャンの暖かみのある粋な歌に、口笛が気ままな感じで絡んでくる。これを聴けば彼らの音楽がなぜ「グッドタイム」と称されたか、理解できるだろう。彼らの本領を発揮した見事な作品だ。ビートルズの「グッド・デー・サンシャイン」はこの曲にP・マッカートニーが触発されて書いたもの。活動期間、曲目は少ないがアメリカのポップスに大きな影響を与えたグループであることは間違いない。
 口笛入り曲の人気曲は実は…
                   
 ちょっと気取って口笛
                   
雨に歩けば
Just Walkin' In The Rain

Johnnie Ray
砂に書いたラブレター
Loveletters In The Sand

Pat Boone

ジョニー・レイの張りのある歌声と、それをなぞるように口笛が追いかけるこの歌は、口笛を使った曲の中でも名曲中の名曲だ。歌と口笛が交互に出てくるレイの56年発表の曲だが、実はこれにはオリジナルがある。レイの3年前にプリゾネアーズというグループが発表して、大ヒットしていたのだ。プリゾネアーズは、そのものずばり本当の囚人たちが組んだグループである。16歳の時強姦罪5件で捕まっていたジョニー・ブラッグという囚人が、他の囚人と組んだグループで、この曲は彼の作品。所長のはからいでラジオで演奏が流れたのがきっかけで獄中でレコードデビュー。ブラッグはその後、冤罪が証明され、77年に完全な自由を得ている。ものすごいストーリーがある曲だ。02年にクラプトンがこの曲をサン・レコードのトリビュート盤で歌っている。

開拓時代のヒーロー、ダニエル・ブーンの子孫のパット・ブーンは、その笑顔に象徴されるように、アメリカのエンターティナー界の良識者である。俳優、ライターとしても成功し、悪童的なプレスリーとは比較対象になった。57年の「砂に書いたラブレター」はリバイバルヒットだが、今や完全にブーンの持ち歌として知られている。この曲には前奏部分から口笛が入るモノと、間奏だけに口笛が入るモノの2つのバージョンがある。よくオールディーズのオムニバスに入っているのは後者の方が多い。前者と後者の間奏の口笛は、メロディはほとんど同じだが、前者の方が若干ワイルドに吹いている。低音の魅力を存分に発揮した彼のバラードは、まさにオールディーズの定番。プレスリーも彼のバラードのコレクターだったというが、彼をもうならせた低音は永遠だ。
 君は何故そんなに無邪気なの…
                   
 失恋してもあきらめきれない想い…
                   
クレア
Clair

Gilbert O'Sullivan
ディズニー・ガール
Disney Girl

Art Garfunkel

「アローン・アゲイン」で知られるギルバート・オサリバンの、米日ではそれに続く72年のシングル。これも英で1位、米で2位となる大ヒットを記録した。もちろん歌も曲も彼自身のオリジナル。オサリバンは、トム・ジョーンズやエンゲルベルト・フンパーディンクらと同じく、敏腕プロデューサー、ゴードン・ミルズに見いだされて世に出た歌手だ。オサリバンは一時期、ミルズの家で彼の家族といっしょに暮らしていた。そのとき、ミルズの3歳の娘クレアちゃんと親しくなり、彼女からインスパイアされて作られたのがこの曲である。口笛の前奏から始まるこの曲は、彼独特の暖かみにあふれた傑作。最後に女の子の笑い声が入っているが、それもクレアちゃん本人のもの。シングルのジャケットは二人が見つめ合うものだったが、恐ろしくかわいい子だった。

ブライアン・ウィルソンの代役としてビーチ・ボーイズに参加したブルース・ジョンストンの作になる、ディズニー・シンドロームにかかった女の子への悲しきラブソング。ビーチ・ボーイズ名義でも録音されている。ビーチ・ボーイズの隠れ名曲のうちの一つ。キャプテン&テニールなど、いろいろなミュージシャンがカバーしている。ガーファンクルが出した75年の傑作アルバム『愛への旅立ち』に収録された彼のバージョンでは、ビーチ・ボーイズのオリジナル同様の口笛が使われている。独特の高音でカントリー調のスローな語り口で歌われ、最後の口笛でフェイドアウトして余韻を残しながら歌は終わる。口笛が失恋の寂しさを伝える絶妙の役割を果たしている。作者のジョンストンがバックバンドで参加。ガーファンクルの良さを存分に発揮させた一曲。
 あっさりした勢いだけの口笛使用曲
                   
 ビートルズを虜にした口笛
                   
シンギング・ザ・ブルース
Singing The Blues

Tommy Steele
ボニー・モロニー
Bony Moronie
ショート・ファット・ファニー
Short Fat Fannie


Larry Williams

トミー・スティールといえば『心を繋ぐ6ペンス』(67)『フィニアンの虹』(68)『最高に幸せ』(63)といったミュージカルの映画版に出演した俳優として日本では知られている。ひょうひょうとしたいかにもイギリス人といった風貌が印象的だった。しかし、50年代、ショー・ビジネスの世界で最初に出たときは、イギリスのプレスリーというキャッチフレーズのティーンエージ・アイドルだった。60年代初期まで歌手活動は続けたが、そこからエンターテナーに転身した。この曲は56年の作品で、彼のシングルとしては3枚目にあたり、初めてUKチャートでナンバー1を獲得した曲。いきなり口笛の前奏からスタートして、途中口笛が何度も挿まれる。プレスリーという触れ込みの割りには軽さが売りだった彼らしい曲。全然ブルースの渋みはない、あっさりした作品。

ニュー・オリンズ出身のラリー・ウイリアムスはもともとセッション・ピアニストだったが、57年、ソロデビューし、この「ショート・ファット・ファニー」で一躍スターダムにのしあがった。同じスペシャリティ・レーベルのリトル・リチャードの「ロング・トール・サリー」とともに、この歌は大ヒットした。チャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」によく似たメロディの口笛が前奏になっている。58年の「ボニー・モロニー」も大ヒットとなったが、こちらは曲の終わりに口笛が使われていた。ビートルズ、特にジョン・レノンがこのウイリアムスにご執心だったことは有名だ。初期ビートルズのレパートリーに、「ディジー・ミス・リジー」ほかウイリアムスの曲が何曲もあった。彼の作品はイギリスのR&Bシーンにかなり影響を与えたといわれている。


Part1.映画音楽に使われた口笛が使用されている音楽

Part3.ロック・ジャズ他の口笛が使用されている音楽

 

(Netscapeではうまく表示できない場合があります)

テーマ別インデックス
Music Memo   Movie Memo   物故者の想い出