WhistlePart3 (口笛が使用されている音楽・ロック・ジャズほか)

口笛は人間に生まれたときから備わっている技量の一つである。個人の差はあれ、誰しもが少なからず口笛を吹いた経験があるだろう。それだけに音楽の世界でも口笛は一つの表現方法として使われることがあるし、口笛を題材にした曲も多い。日本なら美空ひばりの「悲しき口笛」をはじめ、最近ではミスチルの「口笛」などが口笛を題材にした代表的な曲といえるだろう。口笛は人の心の状態をその音や音色で表現できるが、それは人間自身が自分の体の部位を使って吹いているだけに、時には楽器よりもより明確にその状態を伝えることができる。気分がいいときについつい口すさむのも口笛、寂しさを紛らわすのも口笛、あらゆる状況で口笛は吹くことができるのだ。しかし、人に聞かせようとすると口笛にはかなりの技量が要求される。それゆえ、口笛が題材になっていても、口笛自体の音が曲の中にないことも多い。ここでは口笛の音がしっかりと曲の中にフューチャーされた曲をピックアップしてみた。


 余韻を誘う口笛
                   
 狂気の口笛
                   
ゴールデン・イヤーズ
Golden Years

David Bowie
悪魔の呪文
( フォーカス・ポッカス)

Hocus Pocus

Focus

時代によって常にスタイルを変え続けているボウイの、75年の『ヤング・アメリカン』で幕を開けたプラスティック・ソウルと名付けられたソウル系の音を求めていた時代の作品。76年に発表された『ステーション・トゥ・ステーション』に収録されたこの曲は、かなりファンキーな作品だった。ハンドクラップが多用され、一瞬聞こえるハーモニカ、そしてバッキングのコーラスが独特の不気味感を煽っていた。このころ、アメリカに暮らしていたボウイが、当時隆盛していたディスコ系の音楽に影響を受けていたのは確かだが、そこにセルフプロデュースで彼らしい味付けをしたことで、既製のディスコ作品と180度違った独自の世界を作っていた。彼の持つ歌のテクニックが余すところなく出た作品。最後に出てくる口笛がヘビーな演奏の中、抜けて聞こえてくるのが印象的な曲だった。

「悪魔の呪文」というおどおどろしいタイトルが付いたこの曲は、オランダのフォーカスの71年の作品。フォーカスはロックに古典音楽を取り入れたり、ジャズ的な要素を入れたりと、プログレシブ・ロックの中でも個性を際だたせた存在だった。この曲では恐ろしく破壊的で狂人的ノリを見せる。動と静を使い分けるバンドだったが、ここまでキレまくった作品は他にない。ヤン・アッカーマンの攻撃的なリフにはじまり、タイス・ヴァン・リアのヨーデル風の訳のわからないヴォイスが入ってくる。この二人を中心に、けたたましく鳴り響く音の洪水の終盤で、アコーディオンの伴奏で口笛が登場する。これが実に良いコントラストを醸し出している。口笛も最後には音の出ない高音で断末魔の悲鳴のようにして切れてしまう。最近、ヴァネッサ・メイやハロウィンとかがこの曲をカバーしていた。
 孤独感を盛り上げる寂しき口笛
                   
 ロック・バラードの名作
                   
ジェラス・ガイ
Jealous Guy

Roxy Music
ペイシェンス
Patience

Guns n' Roses

ジョン・レノンのちょっと感傷的な「ジェラス・ガイ」は名作『イマジン』に収録された曲だった。レノンが凶弾に倒れたとき、数々の追悼作品が作られたが、これもその一つ。81年にこの曲が売れてから、ロキシーはマニアウケするグループから本格的なメジャーなグループへと変貌を遂げた。ブライアン・フェリーの独特のビブラートと、猟奇的なまでのダンディさがこの曲に実にマッチしていた。このロキシー版では間奏に口笛が挿入され、センチメンタルな雰囲気をさらに盛り上げていた。短いフレーズだったが、「孤独感を彷彿とさせる口笛」の好例といえる。オリジナルよりもむしろこちらの方が好きという人が多いというのもよくわかる、素晴らしい完成度を誇っている。最近、レノンのトリビュート盤の『カム・トゥゲザー』では、ルー・リードがこの曲を歌っていたが、こちらも絶品。

ガンズ・アンド・ローゼズというと、麻薬やセックスがらみで次々と問題を起こしたグループとして悪名高い。逆説的に言えばロックの反逆性を体現したグループとなり、カリスマ的な人気を誇ることになる。ヘビメタのリーダー的存在だったが、そういう彼らの激しい曲の中にあって、異彩を放っていたのが、この「ペイシェンス」だ。アコースティック・ギターと口笛で始まるこのバラードは、ガンズ・アンド・ローゼズの曲だと言わなければ、万人から支持されそうな美しいナンバーである。『GN'Rライズ』という2枚目の、穴埋め的に作られたアルバムに収録されていたが、出来はなかなかのもの。ガンズのコアなファンには物足りない印象を与えるかもしれないが、おそらく名曲として残っていくに違いない。カントリーチックなギターと口笛のコンビネーションが見事。
 ほんのり感を漂わせた美しき口笛
                   
 名コンビが生み出す口笛曲
                   
アントニア
Antonia

Pat Metheny
口笛をフューチャーした曲を生み出す
名アレンジャーとハーモニカの名手のコンビ


Quincy Jones & Toots Thielemans

パット・メセニーが出した1992年出した名作『シークレット・ストーリー』に収録されていた「アントニア」は、当初彼自身の手によるシンクラヴィアによるアーコーディオン音とギターの多重録音によるユニゾンで、テーマが奏でられていた。おそらくシンクラヴィアで作られ口笛らしき音色が、そのバックにテイストとして付け加えられていたが、『ライブ』盤では生の口笛が大きくフューチャーされている。ゴールドスタインの生アーコーディオンと、マーク・レッドフォードの口笛、そしてパットのギターがユニゾンで奏でるテーマは本当に美しい。奇跡といわれたライブ盤の中でも出色の出来で、静の魅力が存分に引き出されていた。優しさがあふれ出るメロディラインは、他の人には真似できないクリエーターとしての彼の才能が存分に発揮されたものである。

クインシー・ジョーンズの81年発表された『愛のコリーダ』に収録されていた、「ヴェロス」には口笛がフューチャーされている。この曲にはジョーンズの親友で、彼の数々のアルバムに顔を出している不世出のハーモニカ奏者、トゥーツ・シールマンが参加している。シールマンはハーモニカばかりでなく、ギターの名手としても知られるが、実は口笛もうまい。情緒たっぷりのハーモニカがメインの曲だが、それを導くイントロとして口笛が使われる。ブラジルのシンガーソングライター、イヴァン・リンスの作。今でこそブラジル音楽界の巨匠として世界に知られているが、まだ世界での知名度が低かった時代に、このアルバムで取り上げていた。このあたりが彼の名プロデューサーとしての面目躍如たるところか。
 しかし、ジョーンズとシールマンによる口笛を使用した曲はこれだけではない。70年の『グラ・マタリ』の「ハミン」、71年の『スマックウォーター・ジャック』に収録された「ホワッツ・ゴーイング・オン」など、多数聞かれるのだ。特に「ホワッツ・ゴーイング・オン」はなかなかの名演だ。マービン・ゲイの名曲をいち早くアルバムで取り上げたが、彼らしいアレンジでこの曲を料理した。10分にも及ぶ演奏は、ジャズ的な構成を持ち、ゲストミュージシャンのインタープレイが聞き物になっている。中盤大きく盛り上がったところで、シールマンのギターと口笛が絶妙な繋ぎとして現れてくる。シールマンならではの、ソロだ。他の人ではこういう味は出すことはできないだろう。ジョーンズにとって、これほど重宝なミュージシャンは他にはいないかもしれない。シールマンの口笛はクインシー・マジックに欠かせない存在なのだ。
 
 カオスの中で鳴る口笛
                   
リトル・チャーチ
Little Church

Miles Davis
マイルスのエレクトリック時代の大傑作『ビッチェズ・ブリュー』、サントラ盤の『ジャック・ジョンソン』、それに継いで1970年に出された『ライヴ・イヴル』にこの曲は収録されていた。その後のジャズ・フュージョンシーンを作り出す現在の巨匠たちを従え、このころのマイルスは実験的な演奏を数多く行っていた。K・ジャレットやC・コリア、J・マクラフリンが弾きまくるファンクが多い中、この曲はちょっと異彩を放っていた。ある意味、つかみ所のない作品だったといっていい。マイルスらによる混沌としたぼやけたカオス状の音の中を、ブラジルのエルメート・パスコワールの口笛が緩やかに絡んでいく。時に神々しく聞こえるその雰囲気が、教会的イメージの心象風景を描写したものなのだろうか。理屈を飛び越えた、感覚的な世界がそこにはある。
 おしゃれなミュゼット・ノアールに口笛
                   
 
ベベ
Bebe

Richard Galliano

以降も追加予定

お気づきの点、あるいはこんな曲があるという方はこちらまで


アルゼンチンのアコーディオン・バンドネオン奏者、巨匠アストル・ピアソラの後継者と評されるフランスのリシャール・ガリアーノ。彼の1999年のアルバム『ア・フレンチ・タッチ』の1曲目に収録されていた曲。アルバム中、唯一他人名義の曲で、マイルスの『ライヴ・イヴル』で口笛を吹いていたエルメート・パスコワールの作。だからなのか、ガリアーノの演奏でも口笛が使われている。原曲は聞いたことがないので、そのあたりの事情はわからない。フランスの街角で生まれたミュゼットを、ジャズ的なタッチ、アプローチで演奏するガリアーノの音楽は美しい。この曲では、ちょっと力強いジプシー風の伴奏に乗って、アコーディオンと口笛がいっしょにメロディを奏でる。若干口笛は控えめに鳴るので、あまり口笛の曲という感じではないのだが、非常に良くできた傑作曲だ。

 

Part1.映画音楽に使われた口笛が使用されている音楽

Part2.ポップスの口笛が使用されている音楽

 

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